国立社会保障・人口問題研究所(社人研)が発表した「日本の世帯数の将来推計」によると、2025年以降、85歳以上の女性において、施設での生活を選ぶ割合が減少するとされています。これは、在宅医療や介護の進展が反映された結果であり、高齢社会の日本において注目すべき変化です。
推計によると、85~89歳の女性の施設利用割合は2025年に17.7%となっており、2050年には16.8%へと減少します。一方で、男性に関しては、同年齢層で2025年に10.0%、2050年には10.9%とわずかに増加する見込みですが、95歳以上では明確な減少傾向が見られます。これは男女ともに、高齢化が進む中で在宅での生活を支持する動きが強まっていることを示しています。
この推計は、2020年の国勢調査を基に、2020年から2050年の30年間にわたる家族類型別の将来世帯数を予測するもので、5年ごとに更新されています。社人研では、在宅医療・介護のニーズの増加を踏まえ、施設利用者の減少を予見しています。これは、高齢者がなるべく住み慣れた環境で生活できるよう支援する政策の影響も大きいと考えられます。
また、65歳以上の一人暮らしの割合は、2050年には1,083万9,000人に上るとされ、このことからも高齢者の生活支援がさらに重要になると予想されます。特に、医療と介護の連携、日常生活を支えるサービス、アドバンス・ケア・プランニング(ACP)の普及が求められています。
これらのデータは、日本社会における高齢者の生活様式の変化を示唆しており、政策立案者や社会全体にとって重要な情報を提供しています。施設ではなく、在宅での老後を選ぶ高齢者が増えることは、より個人の尊厳を尊重した社会を形成する一歩となります。
この調査結果は、高齢者一人一人が望む生活を送るための多様な選択肢を提供し、それを可能にする社会システムの構築が今後の日本には求められると強く感じます。高齢化社会の中で、施設への依存ではなく、自宅で自立した生活を送ることができる環境の整備は、私たち全員にとっての課題です。